日本の格闘技界の歴史を語る上で、RIZIN FIGHTING FEDERATION(ライジン)の存在は欠かせません。
PRIDE消滅後、一度は冷え切った日本の格闘技人気を再び沸騰させ、国民的イベントとして定着させたのがRIZINです。その名は「ライジング・サン(日の出)」と「雷神」に由来し、まさに日本格闘技界の夜明けを象徴しています。
この記事では、RIZINがどのように発祥し、堀口恭司選手や朝倉兄弟、那須川天心選手といった歴代のスターを生み出し、そして現在に至るまで日本の格闘技界を牽引してきたか、その全軌跡、代表的な試合、エピソードを徹底解説します。
RIZIN発祥の背景:日本の格闘技暗黒期と復活への願い
RIZINの誕生は、決して順風満帆なものではありませんでした。それは、日本の格闘技界が経験した「暗黒期」を乗り越えるための、強い使命感から始まりました。
PRIDE消滅後の「失われた8年間」
2000年代初頭、PRIDEが巻き起こした格闘技ブームは社会現象となりましたが、2007年にその活動は突然停止します。
PRIDEの元代表であった榊原信行氏(現RIZIN CEO)が活動の場を失い、日本のMMAは急速にテレビから姿を消しました。この「失われた8年間」は、格闘技ファンにとって長く苦しい時代でした。
2015年大晦日:RIZIN旗揚げと「フェデレーション」構想
2015年、榊原氏が中心となり、PRIDEの元スタッフが集結して立ち上げたのがRIZINです。
旗揚げは同年大晦日のさいたまスーパーアリーナ。RIZINは、特定の団体に縛られず、様々な格闘技(MMA、キックボクシング、後にボクシング)の選手が交流し、共存する「フェデレーション(協会)」として大会を運営していくことを掲げました。
この理念により、他団体や他競技の選手が参戦しやすい環境が整い、RIZIN独自の魅力となっていきます。
RIZIN初期の挑戦と「レジェンド」たちの功績
黎明期のRIZINを支えたのは、ファンが再び格闘技に熱狂するための「ストーリー」でした。
世代交代の物語:ヒョードル、桜庭和志らのリング復帰
旗揚げ大会で最大の目玉となったのは、「60億分の1の男」エメリヤーエンコ・ヒョードルの復帰戦と、日本のレジェンド桜庭和志の参戦です。
彼らPRIDE時代の英雄たちがリングに上がったことで、旧来の格闘技ファンがRIZINに注目。過去と現在を繋ぐ役割を果たし、新しい格闘技ファンを取り込むための重要な架け橋となりました。
女子格闘技の牽引役:RENAと真珠・野沢オークライヤー
RIZINが積極的にプロモートしたのが、女子格闘技です。
シュートボクシングの女王であったRENA選手は、愛らしいルックスと激しいファイトスタイルで一躍人気者に。さらに、タレントの野沢直子さんの娘である真珠・野沢オークライヤー選手など、話題性のある選手を起用することで、ライト層や女性ファンを取り込むことに成功しました。
時代の熱狂を呼んだ「新スター」の誕生と歴史的試合
RIZINを国民的イベントに押し上げた最大の要因は、テレビやYouTubeを媒介にして爆発的な人気を獲得した「新スター」たちの登場です。
堀口恭司:UFC帰還と絶対王者の証明
2017年のRIZIN参戦後、堀口恭司選手は日本の格闘技界の絶対的なエースとなりました。
彼はUFCでのトップランカーとしての実力を証明し、RIZINバンタム級の頂点に君臨。2019年には北米のメジャー団体Bellatorの王座も獲得し、日米二冠同時王者という前人未到の偉業を成し遂げ、RIZINのレベルの高さを世界に示しました。
宿命のライバル:堀口恭司 vs. 朝倉海
RIZIN史上最高のストーリーとなったのが、堀口恭司選手と朝倉海選手による三度にわたる激闘です。
対戦回数 | 開催時期 | 勝者 | 試合の意義 |
1戦目 | 2019年8月 | 朝倉海(KO) | 堀口の日本での唯一の黒星。史上最大のアップセット。 |
2戦目 | 2020年大晦日 | 堀口恭司(KO) | 堀口が長期欠場から復帰し、カーフキックでリベンジ達成。 |
このライバル関係は、RIZINの視聴率と会場の熱気を爆発的に高めました。
「神童」那須川天心:キック界を背負った男の功績
那須川天心選手は、RIZINのリングでプロキックボクサーとしてのキャリアの大部分を築きました。
彼の試合は、その圧倒的なスピードと技術、そして負けなしの戦績から「神童」と呼ばれ、RIZINの顔として多くの集客に貢献。特に、2018年大晦日のボクシング元世界五階級王者フロイド・メイウェザー・ジュニアとの世紀の対決は、RIZINの名前を一躍世界に知らしめる歴史的なエピソードとなりました。
【歴代の代表的なエピソード】大晦日の祭典とSNS戦略
RIZINの成功は、単に試合が面白かっただけでなく、独自のエンターテイメント性と戦略によってもたらされました。
日本の風物詩へ:大晦日興行の復活
RIZINは旗揚げ当初から、PRIDE時代の伝統であった「大晦日興行」を復活させ、定着させました。
年末に家族や友人とテレビで格闘技を観るという習慣を復活させることで、格闘技ファンだけでなく、ライト層も含めた国民的な関心を集めることに成功。「年末の格闘技=RIZIN」という図式を確固たるものにしました。
朝倉未来が確立した「YouTuberファイター」の成功
朝倉未来選手は、その実力に加えて、自身のYouTubeチャンネルで格闘技の裏側やライフスタイルを発信することで、従来の格闘技ファンを超えた若年層のファンを大量に獲得しました。
彼の登場は、格闘家が自らメディアとなり、集客力を高めるというSNS時代の新しいプロモーションモデルを確立。弟の海選手と合わせて「朝倉兄弟」としてRIZINの絶対的なアイコンとなりました。
RIZIN vs. Bellator 全面対抗戦:世界との融合
2022年大晦日に開催された「RIZIN vs. Bellator全面対抗戦」は、RIZINが世界レベルのプロモーションであることを示す大きなエピソードとなりました。
Bellatorのトップ選手たちを迎え撃つ形式は、日本の格闘家たちの実力を世界に示す絶好の機会となり、RIZINのグローバルな地位向上に大きく貢献しました。
RIZINの現在と今後の挑戦
現在、RIZINは主要な階級で王者が定着し、新しいスター(例:フライ級の神龍誠選手やフェザー級の牛久絢太郎選手、クレベル・コイケ選手、平本蓮選手など)も続々と誕生しています。
今後は、韓国やアゼルバイジャンなど、海外での大会開催も積極的に進められており、真のグローバルな格闘技プロモーションとしての地位を確立することが最大の目標となっています。RIZINは、日本の格闘技の歴史を「復活」から「世界へ」と導く挑戦を続けています。
まとめ:日本格闘技の未来はRIZINが照らす
RIZINの歴史は、日本の格闘技界が暗黒期を乗り越え、再び光を取り戻した軌跡そのものです。
榊原CEOの情熱、ヒョードルや桜庭といったレジェンドの貢献、そして堀口恭司、朝倉兄弟、那須川天心といった新時代のスターたちの熱狂的な活躍によって、RIZINは日本のエンターテイメントの頂点の一つに返り咲きました。
「格闘技は面白い」──RIZINはその揺るぎないメッセージを、これからも世界のファンに発信し続けるでしょう。この興奮を、ぜひリアルタイムで体感してください。
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